オーケストラ・ニッポニカ 第十八回演奏会「日本近代音楽館」へのオマージュ
2010年 08月 09日
酷暑といってもいい夏ですが、その中では一雨来そうな不安定な空模様の中、”オーケストラ・ニッポニカ 第十八回演奏会「日本近代音楽館」へのオマージュ”へ、行ってきました。
日比谷公会堂って、行ったことあったのかなあ・・と思いつつ出かけたのですが、記憶にありませんでした。昨今のコンサートホールで、売店で缶ジュース、ペットボトル、スナック菓子を売っているのは貴重です(^^;)って、最近はあんまりコンサートには使用していないそうです。それでも、入り口あたりの天井の低さはともかく、なかなかの風格は漂っているホールです。
「日本近代音楽館」は、評論家の遠山一行氏とその音楽財団を中心に市井の有志の力添えで作られた日本の近現代の音楽に関するアーカイヴでしたが、今春で活動を停止、その資料は明治学院大学に受け継がれることになりました。
基本的にその資金は、実業家でもある遠山氏個人に支えられていたとのことで、こうした状況に至ったのは仕方がないという意見の一方、これだけのものを個人に任せ、次は、私大に任せるという、日本の文化行政の貧困さに肩を落とす人も多いようです。私、個人も自分のわずかな税金を使うのであれば、高速道路の無料化よりも、こうしたアーカイヴの棚板にでも使って欲しい方です。
オーケストラ・ニッポニカは、これまでの演奏会でも、数々の蘇演をおこなっているオーケストラですから、「日本近代音楽館」には、いろいろと協力を仰いでいたということで、今回のコンサートに繋がったようです。
コンサートは、深井史郎 組曲「大陸の歌」で、幕を上げました。私は、この曲が好きですね。以前も書きましたが、私には、この曲から満州帝国の瓦解とかは読み解けません。見知らぬところを好奇心で眺め歩き描いているスケッチを感じます。この人の作品らしい、繊細な立体感も好きです。演奏は、なんだか上手く(?)なったぶん以前の演奏のようなパッションは感じられませんでしたが、それでも良かったです。その中でも夕暮れの街を歩いているようなコール・アングレは、とても良かった・・。
続いての伊福部昭 管弦楽の為めの音詩「寒帯林」は、そうした満州郊外の森を歩いていく音楽でした。私も大好きですが、伊福部さんは圧倒的な人気を誇る作曲家ですから、今回のコンサートも、この曲を聴きたくて来た人は多かったのではないでしょうか。多くの伊福部節を内在していた曲ですが、指揮者は、より歌わせることに注力していたような気がします。残念だったのは、金管が弱いことです。今回は、致命的だったかもしれません。
休憩を挟んで、ラストが大曲、深井史郎の「平和への祈り」です。最後も盛り上がり、まとまった、良い演奏だったのではないでしょうか。
ただ、個人的には、演奏ではなく曲に感じていた違和感の正体に気がついてしまいました。
この曲は、以前の「深井史郎作品展」でも聴きました。その時にも、何か違和感を感じていたのですが、それは”らしくない”ということだったんですね。深井史郎らしくない。諧謔性がない。安直すぎる。
四部から、五部へと移る過程で、私は、ようやくこの曲が深井がいうところのパロディ、ベートーベンの第九のパロディであることに気がついたのですが、いかんせん、ゲーテに比べて、詩のレベルが低すぎる。これでは、パロディの素にはならなかったでしょう。
詩がダメなのに困って、改訂版で管弦楽のみの第三部を付け加えたのは、間違いないと思います。しかし、そこにかかれた曲も、結局は深井史郎らしくない、放送音楽のような曲でした。 私は、この曲のダメなところはNHKの委嘱によったところだと思います。その戦後の文化統制の中で作曲したために、ある意味、戦後民主主義といわれるもののダメなところを背負うはめになってしまったのではないでしょうか?「平和」という曖昧模糊としたキーワードと、一般大衆に向けた平易な音楽が、深井に与えられた使命だったのでしょうが・・。
文化への抑圧は、戦争中の方がひどいかというと、必ずしもそうではなかったようです。終戦後のほうが酷かったこともあるようで、「平和」と「大衆」はそういう場合の二大スローガンでした。東宝などでは、それに辟易して俳優や監督が一時避難しています。黒澤などもそうです。しかし、新人の黒澤はともかく、深井のような大物には選択の余地はなかったのでしょうね。
大作ではありますが、いち深井ファンとしては、代表作には入れて欲しくないなあ・・と思いました(^^;)民主国家の明日を叫んだ曲よりも、傀儡国家と呼ばれた満州の情景を描いた曲の方が優れているというのは、”らしく”て、良いんですが・・。
・・・
オーケストラ・ニッポニカ 第十八回演奏会「日本近代音楽館」へのオマージュ
指揮: 本名徹次
ソプラノ: 佐々木典子
アルト: 穴澤ゆう子
テノール: 鈴木准
バス: 河野克典
合唱: 日本近代音楽館記念合唱団(合唱指揮:四野見和敏)
管弦楽: オーケストラ・ニッポニカ
会場:東京・日比谷公会堂 平成22年8月8日
演目:
深井史郎 組曲「大陸の歌」 (1941/1943)
伊福部昭 管弦楽の為めの音詩「寒帯林」 (1945)
深井史郎 「平和への祈り」四人の独唱者及び合唱と大管弦楽のための交声曲 (1949)
*作詞 大木惇夫

日比谷公会堂って、行ったことあったのかなあ・・と思いつつ出かけたのですが、記憶にありませんでした。昨今のコンサートホールで、売店で缶ジュース、ペットボトル、スナック菓子を売っているのは貴重です(^^;)って、最近はあんまりコンサートには使用していないそうです。それでも、入り口あたりの天井の低さはともかく、なかなかの風格は漂っているホールです。
「日本近代音楽館」は、評論家の遠山一行氏とその音楽財団を中心に市井の有志の力添えで作られた日本の近現代の音楽に関するアーカイヴでしたが、今春で活動を停止、その資料は明治学院大学に受け継がれることになりました。
基本的にその資金は、実業家でもある遠山氏個人に支えられていたとのことで、こうした状況に至ったのは仕方がないという意見の一方、これだけのものを個人に任せ、次は、私大に任せるという、日本の文化行政の貧困さに肩を落とす人も多いようです。私、個人も自分のわずかな税金を使うのであれば、高速道路の無料化よりも、こうしたアーカイヴの棚板にでも使って欲しい方です。
オーケストラ・ニッポニカは、これまでの演奏会でも、数々の蘇演をおこなっているオーケストラですから、「日本近代音楽館」には、いろいろと協力を仰いでいたということで、今回のコンサートに繋がったようです。
コンサートは、深井史郎 組曲「大陸の歌」で、幕を上げました。私は、この曲が好きですね。以前も書きましたが、私には、この曲から満州帝国の瓦解とかは読み解けません。見知らぬところを好奇心で眺め歩き描いているスケッチを感じます。この人の作品らしい、繊細な立体感も好きです。演奏は、なんだか上手く(?)なったぶん以前の演奏のようなパッションは感じられませんでしたが、それでも良かったです。その中でも夕暮れの街を歩いているようなコール・アングレは、とても良かった・・。
続いての伊福部昭 管弦楽の為めの音詩「寒帯林」は、そうした満州郊外の森を歩いていく音楽でした。私も大好きですが、伊福部さんは圧倒的な人気を誇る作曲家ですから、今回のコンサートも、この曲を聴きたくて来た人は多かったのではないでしょうか。多くの伊福部節を内在していた曲ですが、指揮者は、より歌わせることに注力していたような気がします。残念だったのは、金管が弱いことです。今回は、致命的だったかもしれません。
休憩を挟んで、ラストが大曲、深井史郎の「平和への祈り」です。最後も盛り上がり、まとまった、良い演奏だったのではないでしょうか。
ただ、個人的には、演奏ではなく曲に感じていた違和感の正体に気がついてしまいました。
この曲は、以前の「深井史郎作品展」でも聴きました。その時にも、何か違和感を感じていたのですが、それは”らしくない”ということだったんですね。深井史郎らしくない。諧謔性がない。安直すぎる。
四部から、五部へと移る過程で、私は、ようやくこの曲が深井がいうところのパロディ、ベートーベンの第九のパロディであることに気がついたのですが、いかんせん、ゲーテに比べて、詩のレベルが低すぎる。これでは、パロディの素にはならなかったでしょう。
詩がダメなのに困って、改訂版で管弦楽のみの第三部を付け加えたのは、間違いないと思います。しかし、そこにかかれた曲も、結局は深井史郎らしくない、放送音楽のような曲でした。 私は、この曲のダメなところはNHKの委嘱によったところだと思います。その戦後の文化統制の中で作曲したために、ある意味、戦後民主主義といわれるもののダメなところを背負うはめになってしまったのではないでしょうか?「平和」という曖昧模糊としたキーワードと、一般大衆に向けた平易な音楽が、深井に与えられた使命だったのでしょうが・・。
文化への抑圧は、戦争中の方がひどいかというと、必ずしもそうではなかったようです。終戦後のほうが酷かったこともあるようで、「平和」と「大衆」はそういう場合の二大スローガンでした。東宝などでは、それに辟易して俳優や監督が一時避難しています。黒澤などもそうです。しかし、新人の黒澤はともかく、深井のような大物には選択の余地はなかったのでしょうね。
大作ではありますが、いち深井ファンとしては、代表作には入れて欲しくないなあ・・と思いました(^^;)民主国家の明日を叫んだ曲よりも、傀儡国家と呼ばれた満州の情景を描いた曲の方が優れているというのは、”らしく”て、良いんですが・・。
・・・
オーケストラ・ニッポニカ 第十八回演奏会「日本近代音楽館」へのオマージュ
指揮: 本名徹次
ソプラノ: 佐々木典子
アルト: 穴澤ゆう子
テノール: 鈴木准
バス: 河野克典
合唱: 日本近代音楽館記念合唱団(合唱指揮:四野見和敏)
管弦楽: オーケストラ・ニッポニカ
会場:東京・日比谷公会堂 平成22年8月8日
演目:
深井史郎 組曲「大陸の歌」 (1941/1943)
伊福部昭 管弦楽の為めの音詩「寒帯林」 (1945)
深井史郎 「平和への祈り」四人の独唱者及び合唱と大管弦楽のための交声曲 (1949)
*作詞 大木惇夫

# by cariq | 2010-08-09 16:18 | 聞く






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